縮毛矯正の仕組み

縮毛矯正の基本的な流れ

①1剤で元の結合を切断する(還元)

②アイロン(ブロー)で結合を組み換える(水素結合)

③2剤で結合を固定する(酸化)

縮毛矯正で起こる化学変化

縮毛矯正1剤の種類

縮毛矯正1剤のアルカリ値の高い薬剤程、よりクセを真っ直ぐ伸ばすことができます。中性から酸性よりの縮毛矯正1剤を使用するとダメージを抑える事ができます。しかし、いくら傷みにくいからと言って薬剤のパワーを抑えすぎるとクセが伸びなくなります。

※上記の縮毛矯正1剤の種類は代表的なものをまとめたものになります。アルカリ性だと傷んで酸性だと傷まないという意味ではありません。それぞれの薬剤にはメリットとデメリットがあり、その両方を理解する必要があります。

お問い合わせいただいた際に、「前の美容室では微アルカリの薬剤を使っていた」、と、縮毛矯正の薬剤の種類(名称)を具体的に聞かれる方がおられました。よくお話を聞かせて頂くと、前の美容師さんの言葉を信頼されてそのまま言われている場合が殆どで、気に入っていたお店や美容師さんが辞めてしまった、引っ越しなどにより通えなくなった等の理由があるのは理解できます。しかし、その薬剤に対してあまりにも都合の良い理解をされていて困惑しました。具体的には上記の微アルカリを使用していたという場合、10年近く前、微アルカリ縮毛矯正剤はダメージの酷い毛先に対して有効な薬剤である(メーカーの説明)と私は理解し、「クセは殆どないですか?」と尋ねると「クセは強いです」と返答があり、「クセをあまり伸ばしたくないですか?」と再度尋ねると「しっかり伸ばしたいです」という返答でした。私の予想ですが、その美容師さんは微アルカリの「傷みにくい」という部分のみを切り取ってお客様に伝えたのではないかと思います。

ちなみに、当店では酸性よりの薬剤をベースにお客様の毛髪の状態・クセの強さによってアルカリ剤を混ぜて調合しています。この縮毛矯正の仕組みは美容師(プロ)向けの講習で指導している内容です。以下の内容も併せて理解していないとプロではないと言っても良いでしょう。興味のある方は参考にしてください。

縮毛矯正で1番重要な工程

縮毛矯正の工程において、仕上がりに1番重要な工程はずばり「ブロー」です。1剤をしっかりと流してからアイロン前の、濡れた髪を乾かす時から全てが仕上がりに影響します。

ブロー(濡れた髪を乾かす)って何をしているかというと、水素結合を整えています。

水素結合とは、濡れた髪の中の水分蒸発する一瞬に真っすぐな形状にすることです。

水分を蒸発させ過ぎるとパサパサで手触りが悪くなり、逆に水分が残っているとクセが伸びない事になります。

最適な水素結合の状態を整えるためにはかなりの経験技術が必要となるので、アシスタントでは不可能だと考えています。

水素結合の重要性については、くせ毛の形状にも関係しています。

毛髪は2種類のたんぱく質(オルトコルテックス、パラコルテックス)で構成されており、2つのバランスが良く均等な場合は直毛(真円)となります。

くせ毛はパラコルテックス(撥水性)の量が多く偏在しているため楕円形になる為、くねくねと曲がった形状になります。

オルトコルテックスの特徴は柔らかく赤茶色っぽく見え、薬剤のみでも対応可能。

パラコルテックスの特徴はゴワゴワして白っぽく見え、薬剤水素結合の組み換えが必要。

アイロンは水素結合を更に安定させる為に行います。温度は180℃が標準でそれぞれのお客様のダメージ度合いやコルテックスの種類によって調整します。

強く引っ張ったからといって伸びるわけではありません。アイロン前のドライやブローで約80%の水素結合は完了しているので、残り20%の不十分なところを補って、クセの伸びと手触り・ツヤのクオリティーを上げる事がアイロンの役割です。

縮毛矯正最後の工程

アイロンが終了したら最後、2剤という薬剤を根元から毛先まで全体に正確に、しっかりと塗布して定着させます。

この2剤の重要性を理解しておらず甘く考えている美容師さんも多くいます。もし仮にアイロンの後に2剤をつけずにいると・・・毛髪は時間が経つほどにゴワゴワ・ボロボロになり、最後は切れてしまいます。

ここまでが縮毛矯正の仕組みになります。以下に最近よく見かける「酸熱トリートメント」、「髪質改善トリートメント」の仕組みをまとめておきます。宣伝に惑わせれる事なく、ご自分の髪質や目的に合わせて正しい選択の助けになればと思います。

縮毛矯正と髪質改善トリートメントの違い

縮毛矯正は①1剤②アイロン③2剤の工程を順番に行うことで、ご家庭でも乾かすだけで髪が真っ直ぐになる技術です。言い換えると①から③のどの工程も省く事はできません。時間も約3時間かかります。

毛髪の結合を組み換える=歪な毛髪を変形させる事であり、それを可能にできる唯一の手段が縮毛矯正です。

トリートメントは、3ステップと呼ばれる3種類のものを順番につけていくものが一般的(工程が増えても理論は同じ)で、毛髪表面をコーティングするものです。

このページでも表記している直毛=コルテックスが均等で真円なら表面をコーティングするだけで問題ないと考えられますが

しかし、クセ毛=コルテックスが偏って楕円になっている方の場合は、表面をコーティングしてもクセ毛はのままです。

髪質改善=クセが収まる、髪質が変わるという効果は期待できません。そもそも消費者に誤解を招くような表示は業界としてすべきではないと思います。

酸熱トリートメントについて

縮毛矯正との比較

縮毛矯正酸熱トリートメント
①技術工程1剤→アイロン→2剤→仕上げアルカリ剤→シリコン剤→仕上げ
②クセ毛を伸ばせるか伸びる伸びない
③施術時間3時間1時間
④価格2万~3万円1万~2.5万円
⑤どんな髪質に対応できるかクセ毛で広がりやすい方、
既に縮毛矯正されている方
クセが殆ど無く広がらない方

「酸が毛髪のクセに反応して改善してくれる」、「第2の縮毛矯正」、「魔法のトリートメント」、「繰り返せば繰り返すほど綺麗になる」・・・

クセ毛やダメージでお悩みの方にとっては心動かされる、魅力的なワードですが、そんな広告に惹かれて実際に体験された方も多いのではないでしょうか?

私自身も、今から約3、4年前に「酸熱トリートメント」が出てきた時には驚きましたし、宣伝が事実であればすぐに使いたいと思いました。

そもそも「酸熱」の酸はグリオキシル酸などの酸を指します。メーカーによって他の酸を使用しているところもあります。熱とはアイロンの事を指します。熱で結合を強くするという意味だと思います。メーカーや酸熱トリートメントを推している美容師さんの説明によりますと・・・

アルカリ剤を使用せずに、酸が髪の歪んだ結合を整え、最後にアイロンでその結合を強化すると、髪が真っ直ぐになる。繰り返せば繰り返すほど髪が綺麗になる・・・だそうです。

そこで、知り合いのサロン様での酸熱トリートメントの講習に実際に参加することが出来ました。その時に1番有名(SNSでバズっていた)だった商品でした。

技術工程①でまず、アルカリ性の水をつける。あくまで水なので髪に負担が無いという説明でした。

工程②で、その上からトリートメント剤(シリコン剤)をつけ、ウェットアイロン(アイロンの上にゴムのカバーがついており濡れた状態で使える)ではさむ。

工程③一旦お流しする。

工程④ドライして最後に全体をアイロンで仕上げる。

と、いう内容でした・・・。あれ?酸なんてどこにも使ってないぞ・・・

「酸はどこで使うんですか?」と、質問すると、工程③のお流しの後に酸の液体をつける。と、説明されました。「最後の仕上げは必ずアイロンしてください、必ずです!」と、強調されていたのでおもわず失笑してしまいました。

翌日、いつも薬剤を製造してもらっている工場の担当者に連絡し、昨日講習で使用した商品の成分を調べてもらいました。

工程①で使用した水は、弱いパーマ液でした。水ではありませんでした。

工程②で使用したトリートメント剤はごく一般的なシリコン剤でした。

工程③のお流しの後に使用した酸、一般的にアルカリ性からPHを下げるレベルの液体ものでした。

使用されていた製品からメニューを解説すると、

①アルカリ剤(パーマ液)でキューティクルをふやかして、S-S結合を切断する。

②キューティクルをふやかした状態の上にシリコン剤を塗り、熱で押し込む。

③お流しして、アルカリよりに傾いたPHを酸の液体で中性よりに戻す。

④ドライした後にアイロンを挟んで綺麗に見せる。

この内容を薬剤に詳しい人が見たらすぐにわかりますが、トリートメント(シリコン)の効果があるように見せかけるために、パーマ液をかけて、2剤もつけずにアイロンでごまかす(クセが伸びているように見せる)。家に帰ってからお客様が自分でシャンプーして乾かしたらクセは伸びてないし、広がりパサつくのは明らかです。クセが全くなく、ダメージも無い方には問題ないと思います。

酸って閉める効果があるんですよ。硬くなるんです。このメーカーは酸なんてほぼ使用してませんでしたが、ダメージや広がってる髪に高濃度のグリオキシル酸をつけたら、余計に硬くなってパサパサするのは想像できます。

想像だけじゃないんです、実際2年前に工場からグリオキシル酸を取り寄せて実験しました。工場の担当者には「絶対にパサパサするだけやから怒らないでくださいね」と念押しされましたが、そのとうりになりました。

現実とかけ離れたメーカーの宣伝文句と、その事実を確かめようともしない美容師さんたち・・・

美容業界の闇